急騰の理由:需給バランスの歪みとAI連携への期待
2025年7月末、情報戦略テクノロジー(証券コード:155A)の株価が急騰し、注目を集めた。特に7月31日には前日比+20%超の上昇を記録し、一時は900円目前まで迫る場面もあった。
急騰の最大の要因は、需給バランスの極端な崩れだ。個人投資家による信用買いが急増し、買い残が前週比で+11万株超増加。売り残と比べて10倍以上の差がつき、需給は完全に買い手優位となった。その結果として、機関投資家や短期筋の空売りとの対立構造が生まれ、株価は一気に上放れた。
さらに、7月22日に発表された生成AI人材の育成・導入支援を手がける「x3d」との業務提携も、成長期待を後押し。生成AI分野の社会実装におけるパートナーシップは、今後の売上拡大や新規事業の柱として期待されており、個人投資家の間でも話題となった。
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主軸事業:0次請け・エンジニア常駐型の内製化支援モデル
情報戦略テクノロジーの最大の強みは、大手企業向けの「0次請け」スタイルだ。一般的なシステム開発企業が受注するのは一次請け以降だが、同社はクライアント企業内に常駐するエンジニアチームを組成し、システム企画の段階から入り込む。これにより、提案の深度・課題発見能力・スピード感において圧倒的な差別化を実現している。
加えて、同社グループ内にはエンジニア採用支援プラットフォーム「WhiteBox」や人材紹介会社「エー・ケー・プラス」なども存在。内製化を支えるエコシステム型の事業構造が出来上がっており、安定した受注と人材供給の両輪で収益基盤を強化している。
このような体制により、同社は単なるSIerとは異なる、「人材 × 技術 × 組織開発」の領域で存在感を増している。
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今後の成長展望:人材・AI・連結経営によるスケール戦略
日本では2030年までに約59万人のIT人材が不足すると試算されており、エンジニアの獲得競争は年々激化している。そうした中で、情報戦略テクノロジーは「教育・採用・実務」の一体運用により、若手エンジニアの早期戦力化を実現している。
また、2025年度からは子会社・関連会社を本格的に連結化し、グループ経営のスケールアップを図っている点にも注目だ。これはM&Aや新規事業開発の柔軟性を高め、意思決定のスピードを加速させるための布石ともいえる。
今後は、
• 生成AI導入支援事業の拡張
• DX内製化支援のさらなる需要獲得
• 採用・育成・稼働率の最適化による利益率の向上
などを通じて、“自走するIT人材組織”を構築する企業群の中核的存在へと進化していく可能性がある。
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総括
155A 情報戦略テクノロジーは、単なる一時的なテーマ株にとどまらない。むしろそのビジネスモデルは、IT人材不足という社会課題をビジネスチャンスに変え、“持続的な競争優位”を築ける構造を持っている。今回の急騰はその可能性が市場に改めて認識されたサインでもある。中長期目線では、さらなる拡張と進化に期待が集まる企業だ。