――情熱と経済合理性の交差点に生まれる「資産価値」と「成長性」――
サッカーは世界中で最も人気のあるスポーツであり、同時に極めて巨大な経済圏を持つ産業でもある。しかし日本においては、サッカー=「スポーツ」「エンタメ」「地域振興」というイメージが根強く、まだまだ“本格的な投資対象”としての視点で見られることは少ない。だが、世界に目を向けると、サッカービジネスが極めて戦略的な投資対象であり、事業としての成長性を持つ分野であることは明白だ。
■ サッカークラブは「収益モデル」であり「資産」である
まず理解すべきは、サッカークラブが単なるチームや団体ではなく、「事業体」であり、「資産」であるということだ。欧州をはじめとする世界の先進クラブは、選手契約(売買など)、スポンサー収入、マーチャンダイジング、スタジアム運営、アカデミー開発、放映権さらには不動産・都市開発まで、多角的な収益ポートフォリオを築いている。
特に注目すべきは、「選手育成(獲得)=人的資産の創出と売却」という点だ。若手選手を獲得・育成し、数年後により大きなクラブに移籍させる。この一連のプロセスは、スタートアップ投資における“育成とエグジット(Exit)”と極めて似ており、育成環境とスカウティング能力の強化こそが、クラブの持続的な価値創造に直結する。
■ 投資家から見た“サッカービジネス”の魅力
1. ブランディング効果とグローバル発信力
サッカークラブはローカルに根ざしながらも、グローバルに支持されうるブランドを持つ。SNSの影響力やYouTube等の動画配信により、ローカルコンテンツが瞬時に世界を駆け巡る今、地方クラブであっても世界的なブランドへと飛躍する可能性がある。
投資家にとっては、単なる利回りだけでなく、「社会的認知」「国際的ブランディング」「ESG的貢献」など、多様な価値を同時に得られる点も魅力だ。
2. 不況に強い“感情価値資産”
経済が不安定なとき、人々は娯楽やスポーツに“心の拠り所”を求める。サッカークラブはその受け皿であり、地域やファンの帰属意識を担う存在でもある。株式や不動産など他の資産とは異なり、“情熱経済圏”の中で安定的な支持を受け続けるという点で、ユニークな安定性を持つ。
3. 成長市場としてのアジア・日本
欧州ではクラブ価値が高騰し、買収・投資のハードルが上がる一方、日本を含むアジア諸国では、まだ市場の伸び代が大きく、初期段階での投資妙味が存在する。特にJリーグクラブは今、地域連携、アカデミー整備、インバウンド戦略などに力を入れており、これらはすべて長期的な資産形成に資する要素となる。
■ クラブ投資=ハイリスク・ハイリターンではない
誤解してはならないのは、「サッカーへの投資=夢物語・慈善事業」ではないことだ。むしろ、徹底した経営管理と数字に基づく事業戦略がなければ、クラブ経営は赤字に転落しやすい。だからこそ、今こそプロ経営人材の参入と、戦略的パートナーとしての投資家の関与が求められている。
すでに日本国内でも、IT企業やファンドがクラブ経営に乗り出し、従来の「行政+地元企業+OB」型経営から脱却しつつある。これはサッカービジネスが、“持続可能なビジネスモデル”として自立する兆候であり、同時に投資家が合理的に参入可能な分野として成熟しつつあることを意味している。
■ 経営と情熱の交点を狙え
サッカーは感情のビジネスである。しかし、だからこそ理性が求められる。勝敗に一喜一憂するだけでなく、選手の価値、ファンのエンゲージメント、スタジアム収益、クラブの地域的・国際的プレゼンス――それらを冷静に見極め、長期的に価値を最大化していく発想が重要だ。
クラブにとっては、ただの「応援者」ではなく「戦略的な出資者」との連携が未来を拓く鍵となる。逆に投資家にとっては、サッカーという情熱の中にこそ、従来型投資では得られないブランド資産・人的資産・社会的影響力といった無形価値を獲得できる可能性がある。
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■ 新時代の投資とは「情熱 × 経済合理性」の融合
資本だけではクラブは育たない。情熱だけでもクラブは続かない。
いま求められるのは、「投資」のプロフェッショナルと「サッカー」の情熱が交差し、共に成長する新しい関係性だ。
サッカービジネスは、まさにその“交点”に立つ希少な存在である。
【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部
資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など