土曜日, 9月 6, 2025

【コラム】ブラジル人サッカー選手の「現在地」── 世界に挑み続ける魂はどう変わったか

■ 世界に広がるブラジル人プレーヤーの存在感

サッカー界において、ブラジル人選手は依然として世界で最も輸出される存在であり、ヨーロッパ主要リーグから中東、アジアに至るまで、その足跡は広がっています。FIFAの統計によれば、国外でプレーするプロ選手の国籍ランキングでブラジルは常に首位。つまり「世界中どこに行ってもブラジル人がいる」状況は今も変わっていません。

では、その背景にある「貪欲さ」や「挑戦心」は、昔と比べてどうなったのでしょうか。

■ 昔と今の「挑戦心」の質の違い

1970〜90年代、ブラジル人選手が海外へ渡るのは、ほとんどが「経済的理由」と「サッカー環境の差」でした。国内リーグは資金力が弱く、給与の遅延やインフラ不足も珍しくなく、「海外=成功と安定」の図式が明確でした。そのため、多少リスクの高い挑戦でも、若くしてヨーロッパへ飛び込む傾向が強かったのです。

一方、現代ではブラジル国内リーグの商業力が向上し、スタジアム改修やテレビ放映権の拡大、欧州トップクラスに近い待遇を受けられるクラブ(フラメンゴ、パルメイラスなど)も増加。経済的な「必要性」だけで海外を目指す時代ではなくなっています。

■ 資金力向上がもたらした「選択の余裕」

現在のブラジル人選手は、海外移籍のタイミングや行き先をより戦略的に選べるようになっています。昔は「とにかく欧州へ」という姿勢が強かったのに対し、今は自分のプレースタイルや成長計画に合ったリーグ・クラブを選択する傾向が目立ちます。
• 若手:依然として欧州トップリーグを目指すが、ステップアップ用の中堅クラブを経由
• 中堅:中東や中国など、高額年俸と生活の安定を優先
• ベテラン:母国復帰や米MLSでのキャリア延長を選択

このように、「挑戦心」が消えたわけではなく、むしろリスク管理能力が高まった結果、挑戦の質が変わったといえます。

■ 向上心の源泉は経済だけではない

興味深いのは、ブラジル国内の資金力向上にもかかわらず、「世界で通用したい」という向上心は依然として強いことです。理由は大きく3つあります。
1. 代表チームでの地位確立
 ブラジル代表入りのためには、依然として欧州トップリーグでの活躍が有利。
2. 文化的な海外志向
 ブラジルのサッカー文化には「世界の舞台で輝くこと」が成功の証とされる価値観が根強い。
3. 代理人・クラブのビジネスモデル
 移籍金や契約更新のビジネス構造上、海外移籍はクラブや代理人にとっても魅力的。

■ 結論──挑戦は「形」を変えて続いている

昔のブラジル人選手は、経済的必要性からがむしゃらに海外へ飛び込む“荒波型”の挑戦者でした。
現代のブラジル人選手は、経済的な安定を背景に、自らのキャリアを長期的に見据えた“計画型”の挑戦者へと進化しています。

資金力が増した今も、「世界の頂点に立ちたい」という向上心は健在。
ただし、そのアプローチはより戦略的で、リスクを計算し、成功確率を高める方法へとシフトしています。
挑戦の火は消えていない──むしろ燃やし方が洗練されたのが、現代のブラジル選手の現在地です。

【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部

資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など

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