日曜日, 8月 3, 2025
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【コラム】「人が足りない」では済まされない——関西の中小企業に迫る人材難倒産のリアル

「人が集まらない」「採用してもすぐ辞める」——2025年の今、関西の多くの中小企業が直面している現実だ。


人口減少、賃金競争、働き方の多様化。これら複数の要因が複雑に絡み合い、企業経営の根幹を揺るがす“人材不足倒産”という現象が、静かに、しかし確実に広がっている。

■ 人材不足が引き起こす“連鎖倒産”の兆し

2025年上半期、関西地方で報告された企業倒産のうち、約12%が「人材確保難」に起因していた。これは単なる採用不調ではない。ドライバー不足による納期遅延、シェフ不在による店舗閉鎖、IT人材不在による受注キャンセル——“人”がいないことで本業が立ち行かなくなるケースが相次いでいるのだ。

特に大阪・兵庫・京都といった都市部では、万博需要やインバウンド回復の影響でサービス業の人手争奪戦が激化。結果として、地方の企業や中堅以下の事業者ほど人材確保で後手に回り、事業継続の壁に直面している。

■ 賃上げできない企業は「見捨てられる時代」

問題は、単なる採用難だけではない。2024年以降、政府や大企業主導の「構造的な賃上げ」が広がる中、それについていけない中小企業が“人材に選ばれない”存在となりつつある。
時給1,200円と1,500円の募集が並んでいれば、どちらを選ぶかは明らかだ。加えて、柔軟なシフト、リモートワーク、福利厚生などの“副次的条件”でも差が広がりつつある。

賃上げはもはや“意志”ではなく“必須投資”であり、それができない企業は「淘汰対象」となりつつあるのが現実だ。

■ 危機を乗り越えるための“6つの視点”

このような状況下で、関西の中小企業が生き残るには、以下のような視点が求められる。

1.⁠ ⁠賃金だけでなく「働きやすさ」で勝負
 給与水準に限界があるなら、働く時間や場所の柔軟性で差別化せよ。

2.⁠ ⁠業務の“人依存”構造を変える
 属人的な業務はシステム化・マニュアル化・外注化でリスクを分散。

3.⁠ ⁠人が辞めない職場づくり
 1人採るより、1人辞めさせない仕組みを作る方が効果的。

4.⁠ ⁠育成への投資を“先送りしない”
 即戦力だけを追う企業は衰退する。将来人材の社内育成に本腰を。

5.⁠ ⁠外国人材の活用を現実的に検討する
 制度面の変化を見据え、技能実習や特定技能を戦力として組み込む。

6.⁠ ⁠地域・学校・行政と連携する
 単独での採用戦は限界。地元の高校・大学、自治体と“共創”する時代。

■ 「変わる勇気」が企業を救う

人材不足は、外部環境の問題であると同時に、企業自身の体質を問われる“内部要因”でもある。待遇や風土、マネジメントのあり方に抜本的な変革が求められているのだ。
そして、今このタイミングで変われる企業こそが、5年後・10年後の地域経済を支える存在となるだろう。

「人が来ない」と嘆く前に、「自分たちは変われているか」と問うこと。2025年の関西企業には、その姿勢こそが、未来を切り拓く唯一の鍵になる。


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 【筆者】 岩崎 勇一郎

  INVESTOR PRESS 編集長

  データサイエンティスト /経営学とデータサイエンスでJリーグクラブなどの組織戦略と人財スカウト戦略を設計/ 早稲田大学卒・大学院修了、MBA(経営学修士)および工学博士(遺伝子工学)

  Twitter:https://twitter.com/iwasaki_wu

  サッカーデータサイエンス系執筆

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