2025年8月 — かつての「地球温暖化」が、今や「地球沸騰化(Global Boiling)」と呼ばれる異常気象の新段階に突入する中、世界各地で人々の働き方にも大きな変化が訪れている。特に高温多湿の気候にさらされる東南アジアや中東の諸国では、従来の勤務スタイルの見直しが急速に進められている。
■ 午後勤務を避ける「気候対応型シフト」
タイ、フィリピン、インドネシアなどでは、日中の熱波が人体に深刻な負担を与えるため、「午前6時~午前11時」と「午後7時~午後11時」といった二分割勤務が新たな常識となりつつある。
フィリピン・マニラ市では、公務員や建設作業員を対象に、午後1時から4時までの作業を禁止する「ヒートシエスタ」制度を導入。民間企業もこれに追随する動きを見せており、2025年7月時点で労働時間の柔軟化に応じた企業は前年比28%増となった。
■ 中東では「夜間経済」が加速
アラブ首長国連邦(UAE)やカタールでは、すでに夏季における屋外作業を午前11時30分から午後4時まで禁止する法令があるが、2025年はその範囲をさらに拡大。ドバイではナイトマーケットや24時間営業のオフィス街が新たに整備され、「夜間経済(Night-time Economy)」として注目されている。
建設業や物流業では、作業時間を「午後9時〜午前5時」に完全移行する企業も増加しており、気温が50度近くに達する日中の活動を事実上回避している。
■ 健康管理と生産性の両立が課題
世界保健機関(WHO)は「熱ストレスによる労働災害が今後数倍に増える可能性がある」と警告。各国政府は、冷房の整備補助や屋外労働者向けの水分・塩分補給支援、AIを活用した作業環境モニタリングの導入支援を進めている。
一方、労働時間の分散化は労働者の生活リズムを乱す可能性も指摘されており、長期的には生産性と健康の両立をどう図るかが問われている。
地球沸騰化によって人々の暮らしと経済活動の根幹が揺さぶられている。「働く時間」を再定義しなければならない時代が到来しているのかもしれない。