より大きな組織で、より高い目標を達成するために「組織マネジメント」と「リーダーシップ」が必要になります。
これらは企業経営をはじめ、行政組織やスポーツクラブ組織などにも同じことが言えます。
分かりやすく、それぞれプロサッカークラブで例えてみましょう。
リーダーシップ
リーダーシップとは、人や組織を目標に向かって動かす力のことです。
例えば、プロサッカークラブにおいて「リーグ優勝」という目標を設定し、そのためのKPIをチーム内に共有したり、メンバーをモチベートしてチームの総力を高めたりします。
マネジメント
一方で、マネジメントは、人や組織を管理する力のことです。
短期の計画(1ヶ月でスプリント量を○○km走るようにする)を立案したり、メンバーのトレーニング管理(KPIを高めるためのトレーニング)を行ったり、状況の把握や問題解決なども担います。
経営資源(ヒト・モノ・カネ)を管理した組織の全体最適化とも言えるでしょう。
優れたリーダーには、「リーダーシップ」「マネジメント」のどちらの能力も求められます。
コミュニケーション能力の重要性
また、これらの能力を分解していくと、「決断力」「責任感」「コミュニケーション能力」など、複数の要素によって成り立つことが分かります。
リーダーが責任感を持ち、覚悟を決めて決断し、組織全体に発信したとしても、目標が高ければ高いほど、必ず壁にぶつかるのがメンバー同士の「コミュニケーション」の問題です。
「リーダーが何度も伝えているけれど現場で実行されない…」
この問題は多くのリーダーが一度は悩んだことがあるのではないでしょうか?
そのような時に、筆者自身も過去の組織マネジメントのコミュニケーションで心掛けてきたことが以下の4つです。
① 気配り
組織を現場で動かすのは人です。人それぞれ色々な立場や感情を持ちながら現場で動いています。彼らが何を考え、何に悩み、どんな価値観を大切にしているのか、リーダーには現場の末端への気配りや配慮が必要になります。
また、この際に「空気を読む(現場に迎合する)」と「気配り(自分のスタンスは変えずに現場に配慮・傾聴)」の違いをリーダーは明確に区別しておくことも重要になります。
② 目配り
現実的に何万人〜何十万人の組織のリーダーとなれば、一人一人と細かくコミュニケーションを取ることは不可能になります。それでも、現場に足を運び、全体を自分の目でじっくり確認する「目配り」はできます。現場一人一人にも「自分は見られている」という感覚を持たせられることもリーダーに必要なコミュニケーションスキルの一つだと考えています。
③ 人任せにしない
多くのリーダーが「部下に任せること」でマネジメントを完結させてしまう場合があります。現場が上手く機能している時はそれでも良いのかもしれませんが、組織マネジメントはそんな一筋縄で上手くいくことはありません。現場が上手く機能しない時、または上手く機能しなくなる予兆が見られる時ほどリーダーが人任せにするのではなく、自ら動き、現場で気配りや目配せをしながら、”違和感”の答えを探していくことが重要になります。
④ 組織哲学を自分の言葉で語る
最も重要で効果的なコミュニケーションスキルが「組織哲学を自分の言葉で語る」にあると考えています。現場の人間もリーダーが他人の受け売りで真似して語る言葉なのか、それともリーダー自身の経験から本気で伝えている哲学なのか、本物の言葉と偽物の言葉では現場への浸透の度合いが全く変わります。逆に言えば、リーダーが本物の言葉を伝えられている時、その言葉は自然と組織の末端まで行き渡るはずです。
現場が上手く機能しない、自分の考えが伝わっていないと悩むリーダーの方々は、ぜひ「組織哲学を自分の言葉で語る」ということが出来ているのかどうか、じっくりと過去の言葉を思い返して頂ければと思います。
そして、現場のパフォーマンスに違和感を感じる時ほど、人任せにせず、気配りや目配せをしながら、自分が感じた素直な印象を自分の言葉で、組織哲学とともに全員に伝えてみましょう。
【執筆者】吉澤正登
社会投資家 兼 海外大学名誉教授
プロサッカークラブ ファウンダー
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