3ヶ月で倍増する異例の急騰
2025年秋以降、銀とプラチナの価格がわずか3カ月で倍増するという、貴金属市場では異例の急騰を見せている。表面的には「投機マネーの暴走」にも見えるが、その背景にはマクロ環境、需給構造、そして市場心理が複雑に絡み合った現象がある。
米ドルの相対的価値低下か?
第一の要因は、米国の利下げ観測とドル安基調だ。金利低下は利息を生まない貴金属の相対的魅力を高め、株式や債券からの資金シフトを促す。特に地政学リスクや財政不安が意識される局面では、貴金属は「通貨の代替資産」として再評価されやすい。
実態的な用途があるという強さ
銀について注目すべきは、もはや「金の影に隠れた存在」ではない点だ。AI、EV、太陽光発電などの拡大により工業用途が急増し、世界的な供給不足が常態化している。銀市場は規模が小さく、需給が少し崩れるだけで価格が大きく動く。ヘッジファンドから見れば、銀は金よりも高βで、ショートスクイーズが起きやすい理想的な取引対象となる。
一方、プラチナの急騰はより供給サイドの問題が大きい。主要産地である南アフリカの鉱山稼働不安やエネルギー制約が供給を絞り込む中、触媒、燃料電池、宝飾向け需要が重なった。市場規模の小ささゆえ、大口資金の流入が価格を非連続的に押し上げやすい点も特徴だ。
単なるバブルの入り口なのか、それとも…
では、この上昇は持続可能なのか。短期的には過熱感は否めず、急落リスクも高い。しかし中期的に見れば、銀の工業需要拡大やプラチナの構造的供給制約は簡単に解消されない。問題は「どこまでが再評価で、どこからがマニア相場か」という境界線だ。
理論的にあり得ない領域とは、需給やコスト構造を完全に無視し、「上がるから買う」という循環だけで形成される価格水準である。そこに達した瞬間、相場は最も脆くなる。今回の急騰は、単なるバブルの入り口なのか、それとも貴金属の役割が変わる転換点なのか。投資家に問われているのは、価格そのものよりも、その背後にある構造を見抜く力だ。
