土曜日, 9月 6, 2025

【コラム】政治が形づくる日本経済 ― 石破政権の挑戦とその行方

経済は企業や市場の力だけで動くものではありません。日本の歩みを振り返れば、常に「政治の決断」が経済の方向を決定づけてきました。
戦後復興、高度成長、バブル崩壊、そして低成長時代。いま私たちが直面している課題も、また政治の舵取りによって左右されようとしています。

そして2025年、石破茂総理が新たに政権を担ったことで、経済政策の行方が改めて注目されています。

  1. 戦後復興から高度成長 ― 政治が示した「経済第一」

戦後日本の政治は、吉田茂の「経済復興路線」や池田勇人の「所得倍増計画」に象徴されるように、「経済最優先」を掲げました。輸出主導の産業政策、教育やインフラへの集中投資によって、1960年代には年平均10%の成長を実現。政治の方針が、企業活動と生活水準を同時に押し上げた時代です。

  1. プラザ合意とバブルの形成 ― 政策の副作用

1985年のプラザ合意による円高を受け、政府・日銀は景気対策として金融緩和を断行しました。その結果、不動産や株式に資金が流れ込み、バブル経済が発生。政治が「短期的な景気安定」を選んだことで、長期的には過熱と崩壊という大きな代償を招きました。

  1. バブル崩壊と失われた成長

1990年代以降、日本は長期の停滞に入りました。橋本龍太郎政権下での消費税引き上げ(1997年)は、景気の弱い局面での増税となり、個人消費を冷え込ませました。その後もデフレ経済が続き、政治の政策判断が成長力を回復させるには至りませんでした。

  1. アベノミクス ― 金融政策主導の「大胆さ」

2012年に誕生した第二次安倍政権は、「アベノミクス」と呼ばれる三本の矢を掲げました。大胆な金融緩和によって円安・株高を実現し、輸出企業の収益は改善。株式市場は大きく盛り上がりました。しかし、賃金上昇が物価高に追いつかず、家計には恩恵が限定的。政治のメッセージが市場心理を動かした一方で、実体経済の構造改革は道半ばでした。

  1. コロナ禍と大規模財政出動

2020年、新型コロナの感染拡大は日本経済に深刻な打撃を与えました。安倍・菅政権から岸田政権にかけて、大規模な給付金や補助金が実施され、企業倒産や失業の急増は防がれました。しかしその代償として財政赤字は拡大。政治の「危機対応」が経済を下支えした一方、将来の財政健全化に大きな課題を残しました。

  1. 岸田政権と「新しい資本主義」

岸田政権は「成長と分配の両立」を掲げ、最低賃金引き上げやスタートアップ支援、GX投資を推進しました。これにより大企業を中心に賃上げの動きが広がり、脱炭素化に向けた投資も進展。しかし中小企業や地方には十分に波及せず、格差是正には至らないという限界も見えました。

  1. 石破政権の経済政策 ― 「地方重視」と「安定志向」

2025年に誕生した石破総理の政権は、従来の政権とは異なる特徴を打ち出しています。
• 地方経済の再生:
石破総理はかねてより「地方創生」に強い関心を示してきました。補助金や交付金による一時的支援ではなく、地域産業や観光、農業の付加価値向上に資源を集中。東京一極集中からの脱却を強く打ち出しています。
• 防衛と経済の一体化:
安全保障に明るい石破総理は、防衛産業の育成を「経済成長の柱」と位置づけています。国内製造業の技術革新と防衛需要を結びつけ、産業基盤の強化を目指す点は従来政権と異なるアプローチです。
• 財政と社会保障の安定化:
大規模なバラマキではなく、社会保障制度の持続可能性を重視。少子高齢化に伴う負担増に対し、医療・年金制度の改革を前に進める姿勢を明確にしています。
• 経済への影響:
地方企業や中堅産業への資金流入が増える一方、都市部や大企業に偏った成長モデルは是正される可能性があります。また、防衛産業やエネルギー産業への投資が拡大すれば、新たな雇用創出や技術開発を後押しするでしょう。

― 政治は常に「未来の設計者」

日本の経済はこれまで、政治の選択に大きく揺れ動いてきました。そして石破政権もまた、
• 「地方創生による成長の分散」
• 「防衛・エネルギー産業の戦略的強化」
• 「財政・社会保障の安定化」

という方向性を掲げています。安倍政権の「攻めの金融政策」や、岸田政権の「分配重視」とは異なり、石破総理は「安定と持続性」に重きを置いている点が特徴です。

今後の日本経済は、この安定志向が「成長を促す土台」となるのか、それとも「変化に乏しい停滞」となるのか。まさに政治の舵取りが未来を決定する局面にあるといえるでしょう。

【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部

資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など

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