日本は人口減少と高齢化という二重の課題を抱えています。労働力不足はあらゆる産業に影を落とし、経済成長の制約要因となりつつあります。こうした状況の中で、すでに年間30万人規模の外国人が入国している現実を直視しなければなりません。
問題は「外国人を受け入れるか否か」ではなく、「どう受け入れるか」。これを戦略的に位置づけなければ、社会の分断や制度の悪用といった負の側面が顕在化していきます。今こそ、移民問題を国家戦略として捉える時期に来ています。
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国家戦略としての制度設計
第一に必要なのは、明確なマクロ設計です。
外国人比率を含めた人口戦略の立案、統括機能を持つ司令塔の設置、外国人政策担当大臣の新設など、受け入れを包括的にマネジメントする体制を整えることが欠かせません。
同時に、不法滞在の増加や医療保険制度の悪用など現場で生じている問題に対しても、強制送還制度の確立、国籍取得要件の厳格化、入管管理の強化といった実務的な対策が必要です。これを怠れば、国民の信頼を失い、社会的な軋轢を増大させることになります。
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社会統合と「人材活用」の視点
しかし、規制と排除だけでは未来は開けません。受け入れる以上は、外国人を「単なる労働力」ではなく、「社会の一員」「共に成長する仲間」として捉えるべきです。
経営者の視点でいえば、多様な文化や価値観を持つ人材は、企業に新しい視座と発想をもたらします。イノベーションはしばしば異質なものの衝突から生まれるからです。外国人労働者を「低コスト要員」としてではなく、「付加価値を共に創り出す存在」として迎え入れることができるかどうか。ここに経営の真価が問われます。
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地域社会との接点強化
外国人の受け入れが進むと、地域社会に新しい課題と可能性が同時に生まれます。文化的摩擦を防ぐためには、地域住民と外国人が交わる場をつくり、相互理解を深めることが不可欠です。
これは自治体だけの責任ではありません。企業もまた地域の担い手であり、CSR活動や地域イベント、学校やNPOとの連携を通じて橋渡しの役割を果たせます。経営者が地域社会との接点を意識して強化することは、単に社会的責任にとどまらず、企業のブランド価値や採用力の向上にも直結します。
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ESGと国際競争力の文脈で
さらに忘れてはならないのは、移民政策が ESG(環境・社会・ガバナンス) と国際競争力に直結するという事実です。
• 社会(S):多様性を受け入れ、公正な労働環境を整えることは、グローバル投資家が注視する重要な指標です。
• ガバナンス(G):制度の透明性や公正な運用は、国際社会からの信頼を左右します。
• 国際競争力:多様な人材が融合することは、企業のグローバル展開やイノベーションの推進に直結します。
移民政策を「リスク管理」の視点だけで語るのではなく、ESGや国際競争力の文脈に組み込み、積極的に価値創造へと転換していくことが求められています。
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経営者に問われる覚悟
最終的に、制度を設計するのは政治の役割ですが、現場で外国人と向き合い、共に未来を創るのは企業と地域社会です。
経営者に求められているのは、外国人を受け入れる環境をいかに整え、彼らの力を活かし、日本社会全体の持続可能性につなげていくかという覚悟です。
移民政策を「国家戦略」として捉えることは、日本社会の未来を守るための挑戦であると同時に、私たち経営者自身の成長戦略でもあるのです。
【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部
資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など