インバウンドが拓く日本経済とサッカーマーケティングの新地平
2025年、訪日外国人客は過去最多の4,000万人に達しようとしている。コロナ禍を経て復活した観光需要は、単なる一過性のブームではなく、日本経済の新たな柱として確実に存在感を増している。
「インバウンドは自動車産業に次ぐ第二の基幹産業になり得る」。この視点は、観光や飲食にとどまらず、スポーツ産業、特にサッカーにとっても大きなヒントを与えている。
インバウンドと都市戦略 ― 大阪モデルの示唆
大阪は「中継都市」という発想で、猥雑さや雑多さを武器に外国人観光客を引き込んできた。観光資源は必ずしも「整然」としたものばかりではなく、混沌や雑多さすらも魅力に変えることができる。この戦略は、サッカークラブにも応用可能だ。クラブが持つ熱狂的な応援、地元コミュニティの濃密な文化、スタジアム周辺の雑多な風景は、まさに「その土地らしさ」であり、外国人観戦客にとってはかけがえのない体験資源となる。
経済波及効果とサッカークラブの役割
観光庁の目標である「2030年6,000万人、消費額15兆円」という数字は、宿泊や飲食だけでなく、スポーツ観戦消費も組み込んで達成すべきものである。欧州サッカーではすでに、観戦ツーリズムが街の経済を牽引している。スペインのバルセロナやイギリスのリバプールでは、クラブが都市ブランドそのものを体現しており、観戦旅行は地域経済を潤す「仕組まれたインバウンド」である。
日本においても、Jリーグの試合観戦や選手交流イベントを観光パッケージに組み込むことで、地域の消費を押し上げることが可能だ。特に大阪のようなゲートウェイ都市では、訪日客を地方クラブへ誘導する「観光×サッカー×経済活動」が経済効果を最大化するカギになる。
文化・社会課題とサッカーの接点
観光は文化や社会課題と深くつながっている。能登半島地震の復興観光やLGBTプライドセンターのように、地域が抱える課題そのものを価値化する発想は、サッカークラブの活動にも重なる。クラブが地域の多様性や復興、教育活動を支援し、それをインバウンドに伝えることは、単なる観戦以上の「参加型ツーリズム」として外国人客を引き込む可能性を秘めている。
「第二の基幹産業」としてのスポーツ×インバウンド
観光事業者だけでなく、「共創ネットワーク」を構築し、スポーツクラブや地方自治体との連携により広げることも大事である。
クラブが単独で海外観光客を集めるのではなく、空港、ホテル、鉄道、飲食、自治体と連携し、一つの大きな「観光産業体」として協業することが重要になる。
サッカーはすでに世界共通語であり、そのプラットフォームを活用すれば、地域ブランドの認知を一気にグローバルに拡張できる。大阪・関西万博を契機に、「観光×サッカー× 経済発展」が日本経済の新しい成長ストーリーを描き出す可能性は極めて大きい。
そして
インバウンドは消費額や訪問者数という数字以上に、文化や社会を再評価し、新たな価値を創出する力を持つ。サッカークラブはその中心的担い手となり得る。日常的な応援文化や地域とのつながりが、訪日客にとっては唯一無二の体験資源になるからだ。
「第二の基幹産業」としてのインバウンド産業の発展は、サッカーを含むスポーツビジネスにとっても未踏のチャンスであり、地域経済と国際交流を同時に前進させる大きな推進力となるだろう。
【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部
資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など