土曜日, 9月 6, 2025

【コラム】補助から転換を ―― エネルギー高騰時代に求められる新しい支援の形

近年、ガソリンや電気料金の高騰に対して、日本は当然のように補助金を投入してきました。確かに、急激なエネルギー価格の上昇は家計や企業に重い負担を与えます。短期的に痛みを和らげるという意味では有効でしょう。
しかし、その方法は本当に持続可能なのでしょうか。

— 補助金が抱える「逆効果」

エネルギーの多くを輸入に頼る日本にとって、価格高騰は「効率的に使う」「国産の再生可能エネルギーを拡大する」という行動を後押しするチャンスでもあります。ところが補助金で価格を人工的に下げてしまえば、節約や省エネ投資への動機は薄れ、結果的に変化を先送りすることになってしまいます。
次に価格が上がれば、また同じ補助を繰り返す――これでは未来に負担を積み重ねるだけです。

— 投資を促す支援にシフトを

むしろ必要なのは、「消費を抑える方向へ誘導する支援」です。
ガソリン価格が高騰するなら、電気自動車やハイブリッド車、燃費性能の高い車種への買い替えを後押しする。電気料金が上がるなら、住宅の断熱改修や省エネ家電への更新を支援する。そうした政策は一度の投資で将来の消費を減らし、次の価格高騰時の負担を軽くする効果があります。

— 本当に支援が必要な人へ

もちろん、価格上昇の痛みを強く受ける低所得世帯への配慮は欠かせません。ただし一律の補助ではなく、給付付き税額控除のように「必要な人に絞った支援」を導入すべきです。これならエネルギー価格だけでなく、食料品など生活必需品が値上がりした際にも柔軟に対応できます。

— 炭素税で社会を変える

さらに視点を広げれば、欧州各国が進めるように「炭素に価格をつける」ことも避けて通れません。フィンランドは1990年に世界で初めて炭素税を導入し、それをきっかけに脱炭素技術や再エネの普及が進みました。
日本も炭素課税を強化し、その税収を社会保険料や年金財源の軽減に活用すれば、環境対策と社会保障の安定化を同時に実現できます。

— まとめ

いま必要なのは「目の前の価格を下げる」補助ではなく、「未来の消費を減らす」投資支援です。エネルギー効率化と再エネ拡大を進め、同時に公正な支援の仕組みと社会保障の財源確保につなげていく。ガソリン税や補助金の是非だけでなく、温暖化対策・低所得世帯支援・社会保障の安定を一体で考える視点が、日本にとって欠かせない時代になっています。

【筆者】 編集部スペシャル
INVESTOR PRESS 編集部

資本家 / 政策プランナー / 官民連携スペシャリスト / データサイエンティスト など

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